幕間

140文字で語りきれなかったあれこれ

ミュージカル『刀剣乱舞』幕末天狼傳

ミュージカル『刀剣乱舞』幕末天狼傳

10月25日(火)19:00公演
サンケイホールブリーゼ

 

流行りの刀ミュをわたしも体験せねばなー。
そんな気持ちで『いつか行けたらいいな』枠に収まっていた刀ミュのチケットが手に入ったので観に行って来ました!

 

なにかと話題の刀剣乱舞、主役はネルケ2.5次元舞台の立役者と言っても過言でない程に実力をつけてきた刀ミュではおなじみ佐藤流司、脇を固めるこちらも2.5次元界隈のトップみたいな人小越勇輝、わたしはあまり存じ上げないのだけどペダステのオタクからの支持も厚い鳥越裕貴。
舞台は幕末で新撰組が物語の中心にいるとなると、オタクなら是が非でも観たい良作の気配がしますよね。
新撰組なんて、薄桜鬼やら宝塚やら大河ドラマやら、年に何回見るの?ってくらいメジャーな線だけに脚本でコケたら損しかしないぞ〜という不安もありましたが!

時間遡行軍が暗躍する幕末・京都から物語は始まる。
新撰組の刀連中の中に何故か配置される蜂須賀虎徹と長曽禰虎徹の確執、沖田総司最後の戦場となった池田屋に選ばれた加州清光と選ばれなかった大和守安定の思い、それを見守るのが土方組の役目って感じの配役。

安定は病に倒れる沖田を助けたい、人の体を得た今の自分なら池田屋でも沖田の力になれるという思いと、歴史を改変するようなことをしては時間遡行軍となんら変わらないのではないかという思いの間で葛藤する。同じく沖田の愛刀であり池田屋事件の際沖田に選ばれた清光はそんな安定の思いを察して嗜める。
嗜める中にも池田屋に連れて行って貰えなかった安定の心情を察する様な感情が見え隠れするのも、なんだかこの2人の絆の深さが見て取れて良かった。
清光は人の体を得たとしても結局のところは刀である自分たちには何もできないし、歴史への干渉も許されないことから当時の自分と同じ思いを安定にさせたくないって気持ちが強い分、新撰組と関わろうとする安定が余計に許せないんだろうな。
流司くんの加州清光は可愛いのだけど、粘着質ではなくて、さっぱりした気持ちの良い人なのだけど少女のような愛嬌がある不思議な魅力のある人だ。
刀ミュの審神者の初期刀であるからか、他の刀に対する思いやりや主命にも人一倍こだわりがあるように見えるのだけど、安定に対しては前の主が同じで昔馴染みであるということからも少々過保護になっている。
その辺りの役のつくり込みも上手いなぁ…久々の流司くんのお芝居だったけど役者として成長が感じられて嬉しい。

 

戦況が悪化して追われる身となる新撰組を見ているのも、病床につく沖田さんを見ているのも辛い。
劇場も涙で鼻を啜る音が聞こえるくらいなんだからそんな沖田さんの側にいることを選んだ安定はホントにもどかしくて辛いだろう。
沖田役の栩原楽人さんが殺陣がお上手なだけでなく芝居も良くて声の綺麗な方だから、沖田総司のイメージぴったりでよくこんな良い役者連れて来たな!と思って終演後にググったら、この方大河ドラマ龍馬伝』でも沖田総司役で出演なさっていたのね…。
もうプロの沖田総司だよ。この方。
そんな方に脇を固めて貰えて幸せなカンパニーだな。

結局、安定が新撰組と接触したところで近藤さんは捕縛されるし、沖田さんの病気は悪化の一途を辿る。
沖田さんに忍び寄る『死の影』のメタファーとして『黒猫』の映像が使われるのは良い演出だなぁ。
彼は病床の自室の庭にいつも現われる黒猫を斬ろうとするが幾度となく失敗し、自身の衰えを感じたという逸話があるので。
その黒猫(時間遡行軍だったのだけど)に唆されて近藤さんの処刑を阻止するべく沖田さんの運命が変わっていくって上手い話の流れだよね。
(結局は時間遡行軍から解き放たれて歴史の大筋から外れることなく退場となるのだけど…)
ここは虎徹兄弟の確執に決着がつく良い場面でもあるし収まりが良い。
沖田さんに対する思いの清算も、清光の気遣いも受け入れて一回り強くなった安定が観られて良かったな〜とは思うのだけど、堀川くんと兼さんの見せ場ちょっと少ないよね〜。新撰組という組織を語る上で2人は重要なポジションではあるのだけど。見せ場が少ない気がするのは気のせい?

 

2.5次元舞台って人気なだけに若手俳優フリマかよ!ってくらいに脚本・演出にこだわらないイケメン売り出し舞台が増えている。
母数が増えた分演劇として駄作もある。
そんな中で若手俳優の人気、原作『刀剣乱舞』の人気に甘んじない良い脚本だったから刀ミュのこれからに期待が募る。

 

2部のライブも最高で、とにかく「かわいい」と「かっこいい」の応酬、ファンサ貰えたら脳が溶けるくらい嬉しい。
刀ミュがお芝居とライブの2部制だと聞いた時は「は〜〜〜〜?ミュージカルなのにライブ?ネルケなに考えてんの?刀剣男士がライブなんてドルステじゃあるまいし???」って完全否定していて初演も観に行かないくらい嫌だったのだけど、実際見てみたら素敵だし客席のお客さんもウチワとかペンライトとか持って来てこれが醍醐味と言わんばかりに定着しているし大成功。まんまとネルケの手の平で転がされている。

 

わたしは宝塚(だいたい1幕がお芝居、2幕がショー)のオタクでもあるのだけど、1幕のお芝居がバッドエンドでも2幕目のショーが楽しかったらどんなバッドエンドも吹っ飛ぶくらいハッピーな気持ちで帰れることを知っているのに、なんで嫌だったのかな?
やっぱり刀剣男士ってタカラジェンヌと違ってちゃんと設定のあるキャラクターだから演じる俳優の個性が出ることも、ましてやアイドル売りされることも嫌だったのかもね。そんな心配しなくても大丈夫なくらい楽しいのだけど。

 

久々に再演、続編を期待したい作品だったな〜。
ネルケ的にはテニミュに継ぐ新たなコンテンツとして成長させていく予定みたいなので今後どんな風に成長していくのか楽しみ。